バルコニー防水工事

バルコニー床防水改修工事についてご説明します。

バルコニー床防水改修工事の必要性

防水改修工事の重要性とは?

集合住宅においては屋上防水以外にも防水が施されているところがあります。
重要なところではバルコニー(ベランダ)と開放廊下や階段です。
共に床面の下に居室が無いために庇と同じ様な感覚で床面にコンクリートを打ち込み、防水モルタルで仕上げるのが一般的な施工方法でした。

防水モルタルで仕上げるのは、コンクリートの床面の精度が低いため補修を加えるためと、雨が掛かるためモルタルに樹脂を混ぜてひび割れを軽減する目的がありました。
実際、建築基準法上はこれらに対する防水を義務付けてはいません。

ところが60年以上は持つといわれたコンクリートにひび割れや、コンクリートの中性化による鉄筋の腐食が起こる事が判明し、コンクリート躯体を雨水や空気中の炭酸ガスから保護する必要性が叫ばれ、バルコニーや開放廊下などに防水を施工する事になっていきました。

また、もう一つの理由は、2000年に施工された「住宅の品質確保に関する促進法」いわゆる品確法により、住宅供給者は「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」の瑕疵に関して10年間を義務付けられたことにより、新築物件でもバルコニーや開放廊下に防水を施工する事が定着してきました。

それまでは外部と考えられ、雨水の吹き込むのは当たり前で、吹き込んだ水を速やかに排水する事だけ考えられ、排水勾配を確保する事が重要と考えられていました。
しかし、実際には片持ち梁が多いバルコニーや開放廊下の床は経年とともに小さな亀裂が生じ易く、これが水道となって下階の室内への漏水事故が起こる事があります。
このため大規模修繕工事には必須の重要な修繕工事となりました。

バルコニー床防水改修工事の優先度

屋上防水改修工事と異なってバルコニーの場合は居室側にあるため、工事は仮設足場を架けて外部から施工する事になります。
最も一般的なウレタン塗膜防水工法の場合、仕上げまで最低でも4工程が必要でしかもウレタンは乾きにくいため、作業には7~10日程を要します。

単なるシーリング工事や部分的な補修工事と異なり、施工中には入居者のバルコニーへの立ち入りは出来なくなりますので、事前に予定日を告知させて頂き、入居者様のご理解とご協力を頂く必要があります。

また、仮設足場を設けない場合には室内側からの出入りする事になりますが、外部の者が入室する事にはプライバシーの点で問題があり、事実上仮設足場のある大規模修繕工事の時以外には不可能な工事といえます。

大規模修繕工事ではバルコニーの床防水工事と共に、サッシ廻りのシーリング打替え工事や外壁・軒天の塗替えも平行して行われますので、仮設足場が不要の開放廊下の床防水工事と比べ、工事の優先度はかなり高いと認識されています。

バルコニー床・軒天の劣化現象

バルコニーの床面は躯体の乾燥・収縮、又は地震などのよる挙動のため、クラックの発生は避けられません。
また、打ち放しコンクリートの床面にはモルタルが塗られており、寒暖の差や凍結等により表面のモルタル浮きが発生し易くなります。

クラックを放置すると雨水が浸入して鉄筋が腐食して爆裂を起こし、やがて貫通クラックとなって軒天に達します。
これにより漏水やエフロレッセンスが発生し、美観を大きく損なうばかりかコンクリートの中性化はさらに進んで躯体の耐久性を損い、建物の資産価値を低下させる結果にもなりかねません。

したがって基本的に防水処理が必要な事と、防水処理を行なうに当たっては適正なモルタル浮き・クラックなどの下地補修、あるいは排水溝などの勾配不良を改善する必要があります。
したがって足場を要するこの工事は、マンションの大規模修繕工事では必須の改修工事項目となっており、大変重要でありかつ優先度の高いものと考えられています。

  • バルコニー床・軒天の劣化現象1

    床面のクラック

  • バルコニー床・軒天の劣化現象2

    床面のモルタル浮き

  • バルコニー床・軒天の劣化現象3

    軒天に達する貫通クラックとエフロ

  • バルコニー床・軒天の劣化現象4

    漏水とRC被り厚さ不足による軒天の爆裂

バルコニー床防水工事の工法

バルコニー床防水工事の工法

日当りの良い南側(南面バルコニー側)は劣化の進行が早く、北側(開放廊下側)は比較的進行が遅いという傾向があります。
また、基本的には歩行部分となりますので、工法についても軽歩行に耐えられる工法や仕様が必要です。

分譲マンションの大規模修繕工事には必須ともいえる工事ですが、一般的に行われている工法がウレタン塗膜防水工法塩ビ防滑シート貼り工法です。
バルコニーの床防水工事の場合、屋上防水と異なって狭い場所や側溝・巾木などがあり、シート形状の防水工法で全てを納める事は難しいといえます。

その点狭いバルコニー内の工法としてウレタン塗膜防水工法は防水性の点で優れ、最近までは主流となっていた工法です。
ただし、プライマーの溶剤臭がきついため、臭いに敏感な方やお子様には十分な配慮が必要です。

近年では床面に廊下と同様な長尺塩ビシートを貼り、その他の排水溝や巾木などをウレタン塗膜防水工法で仕上げる工法も採用されています。
配色や模様の選択が可能な塩化ビニールシート防水工法は、美観に優れている事と刺激臭が少ない点で優れています。

分譲マンションで施工頻度が高い材料と工法

  • ウレタン塗膜防水工法
    床面・立上り(巾木)側溝とも塗膜防水仕上げ。
  • 塩化ビニール系長尺シート防水工法
    【床面】塩化ビニール系長尺シート  【立上り(巾木)・側溝】ウレタン塗膜防水仕上げ
  • 分譲マンションで施工頻度が高い材料と工法1

    ウレタン塗膜防水工法(歩行用防滑仕上げ)

  • 分譲マンションで施工頻度が高い材料と工法2

    塩ビシート貼り防水工法

バルコニー床ウレタン防水工事の工程

雨が降り込むバルコニーにおいて、その床面コンクリートに雨水が侵入するのを防ぐために行われます。
狭い場所においても施工性が良いのがウレタン塗膜防水工法の利点です。

ウレタン塗膜防水は塗料を床面に塗布し、硬化させて防水塗膜を形成する工法で、硬化する際水分を嫌うため、施工時の天候および湿度に充分注意する必要があります。
また、塗付されたウレタン防水材の硬化に時間を要し、何度か塗り重ねを行うため、バルコニーへの出入りができなくなる期間(1週間~10日)が生じます。

なお、工法には打継ぎ目地やクラックなどの挙動に対応し、補強用のメッシュを入る場合と、それ程の強度が必要とされない場合にメッシュなしで施工される場合があり、耐久性・経済性などから総合的に判断して仕様を決定します。
なお、雨や冬期間の積雪時には滑り易いために防滑仕様とするのが一般的です。

防滑仕様の場合はトップコート塗布の際に微細なゴムチップを混入しますが、ゴムチップ粒の大きさを変える事により多少仕上がりを調整する事も可能です。

  • バルコニー床塩ビ防滑シート貼り防水工事の工程1

    1.施工前
    事前に下地の確認を行い、高圧洗浄の後に下地調整処理を行ないます。(モルタル浮き・クラック・凍害・勾配の不良など)

  • バルコニー床塩ビ防滑シート貼り防水工事の工程2

    2.プライマー塗布
    下地への吸込み防止・接着力強化のためローラー又は刷毛でプライマーを塗布します。

  • バルコニー床塩ビ防滑シート貼り防水工事の工程3

    3.プライマー塗布完了
    プライマーはオープンタイムを守って使用します。

  • バルコニー床塩ビ防滑シート貼り防水工事の工程4

    4.メッシュシート貼り
    防水材の強度と耐久性を増すために、平場に補強用のガラス繊維製クロスを貼ります。(メッシュ無しの仕様もあります)

  • バルコニー床塩ビ防滑シート貼り防水工事の工程5

    5.1層目のウレタン塗布
    防水材を適正に攪拌・混合し、速やかに床面に流し、金鏝、ゴムベラなどで規定量を均一に塗布します。

  • バルコニー床塩ビ防滑シート貼り防水工事の工程6

    6.2層目のウレタン塗布
    1層目の硬化後、塗布面をチェックし、ピンホール、クラックがないかどうかチェックして2層目を平滑に仕上げます。

  • バルコニー床塩ビ防滑シート貼り防水工事の工程7

    7.トップコート塗布
    トップコートを規定の料の配合で混合・攪拌し、ローラー刷毛、スプレーで塗布して仕上げます。

  • バルコニー床塩ビ防滑シート貼り防水工事の工程8

    8.施工完了
    ノンスリップ仕上の場合はトップコート攪拌後、微細なゴムチップを混入し、ローラー刷毛等で施工します。

バルコニー床 塩ビ防滑シート貼り防水工事の工程

最近の防水工事は美観の向上と汚れの付着が比較的少ないことから、塩ビシート貼り工法が主流となっています。
ウレタン塗膜防水工法の場合、防滑仕上げの小さなゴムチップの凹凸で汚れが溜まりやすい事と、3回塗りになって工程が多く塩ビシートに比べて工期も長く割高になるのが難点です。

既存のシートを撤去して新たに塩ビシートを貼りますが、剥がした際に接着剤の残りや薄塗りモルタルの剥がれが生じやすく、高さ1.0mm~2.0mm程度の不陸調整が必要です。
また、まれに竣工時の施工不良による勾配不良のため水溜りが発生しているケースがありますが、この場合には左官職人をいれて床面全体の勾配調整をする必要があります。

この項目は意外と当初の修繕設計の中に入っていないケースが多く、工事着工前に全世帯にアンケート調査を実施する事も重要です。
過去の施工物件では、最大で高さ5.0mmの勾配不良が見られ、床面全体の9割以上の調整となりました。
モルタルは即硬性で乾きが早い樹脂モルタルを使用します。

作業の際にはエポキシ系の接着剤を使用しますが、貼り込みの際には多少臭いが発生しますので予め告知を行い、作業中の際サッシは締めて頂くようお願いします。
作業が完了すると臭いは少なくなりますので、臭いのきついウレタン塗膜防水よりは影響は少ないでしょう。

シートの接合部は電熱の溶接器具を使って綺麗に仕上げ、シート剥がれや雨水の侵入防止のための端末シールを打ち込んで作業は終了します。
竣工時に端末シールが打たれていないケースがたまに見受けられますが、シート剥がれの原因となり、床面スラブに貫通クラックが入っている場合、漏水となって軒天からエフロレッセンスが流出しているケースがよく見られます。

なお、シート貼り前の工程として、平場・排水溝・巾木のウレタン防水仕上げ(密着工法)を行います。

  • バルコニー床塩ビ防滑シート貼り防水工事の工程1

    1.施工前

  • バルコニー床塩ビ防滑シート貼り防水工事の工程2

    2.電動カッターで既存のシート剥がし

  • バルコニー床塩ビ防滑シート貼り防水工事の工程3

    3.既存シート剥がし完了

  • バルコニー床塩ビ防滑シート貼り防水工事の工程4

    4.床面の勾配不良の調査

  • バルコニー床塩ビ防滑シート貼り防水工事の工程5

    5.勾配不良(高さ5.0mm)水溜りが発生

  • バルコニー床塩ビ防滑シート貼り防水工事の工程6

    6.速乾・速硬性の樹脂モルタルにて調整完了

  • バルコニー床塩ビ防滑シート貼り防水工事の工程7

    7.床面全体の90%を調整

  • バルコニー床塩ビ防滑シート貼り防水工事の工程8

    8.床面に不陸がある場合には調整します

  • バルコニー床塩ビ防滑シート貼り防水工事の工程9

    9.薄塗りモルタルで不陸調整完了

  • バルコニー床塩ビ防滑シート貼り防水工事の工程10

    10.塩ビシートカット作業

  • バルコニー床塩ビ防滑シート貼り防水工事の工程11

    11.エポキシ系専用接着剤を塗布

  • バルコニー床塩ビ防滑シート貼り防水工事の工程12

    12.シート接着作業

  • バルコニー床塩ビ防滑シート貼り防水工事の工程13

    13.シート接合部の溶接作業

  • バルコニー床塩ビ防滑シート貼り防水工事の工程14

    14.エポキシ系端末専用シールの打ち込み

  • バルコニー床塩ビ防滑シート貼り防水工事の工程15

    15.施工完了 排水ドレン廻り

  • バルコニー床塩ビ防滑シート貼り防水工事の工程16

    16.施工完了