マンション管理士の三島です。今回は「長期修繕計画②」をお届けします。
長期修繕計画②
― 4月1日改正法で「修繕だけでは守れない時代」へ。再生をどう計画に組み込むか
- 長期修繕計画は“修繕の予定表”ではなくなった
2026年4月1日に施行された区分所有法の改正は、マンションの意思決定を大きく変えました。 特に重要なのが 「再生(建替え・一棟リノベーション・敷地売却)」が多数決で進められるようになった 点です。
- 建替え決議:5分の4 → 4分の3へ緩和
- 一棟リノベーション:全員一致 → 5分の4へ緩和
- 敷地売却:新制度化、5分の4で可能
これにより、従来の「修繕を積み重ねて延命する」一本線の計画ではなく、 “修繕”と“再生”の二本立てで未来を描く長期修繕計画が求められる時代になりました。
- なぜ「再生」を長期修繕計画に組み込む必要があるのか
理由は3つあります。
(1) 築40年超マンションの急増
築40年超のマンションは2025年に約125万戸、2035年には約250万戸へ増加する見込み。 老朽化が進む中で、修繕だけでは安全性・資産価値を維持できない物件が増えています。
(2) 所有者不明問題で「修繕が決められない」物件が増加
相続未登記や所在不明者がいると、総会決議が成立しないケースが全国で発生。 今回の改正で、裁判所の認定により所在不明者を母数から除外できるようになりました。
つまり、 “修繕ができないから再生に進む”という選択肢が現実化したのです。
(3) 再生のハードルが下がり、選択肢が広がった
改正後は、
- 建替え
- 一棟リノベーション
- 解体・敷地売却
といった再生手法が、現実的な多数決で進められるようになりました。
- 長期修繕計画は「再生の分岐点」を示す計画へ
これからの長期修繕計画は、次のような構造が必要になります。
- ① 修繕で維持できる期間
防水・外壁・設備更新など、従来の修繕を積み重ねて安全性を確保できる期間。
- ② 修繕では限界を迎えるタイミング
- 耐震性不足
- 外壁剥落の危険
- 給排水管の全面更新が必要
- 修繕積立金の不足が慢性化
こうした「修繕では限界」というポイントを明確に示す。
- ③ 再生に切り替える判断基準
改正法により、再生の決議要件が緩和されたため、 長期修繕計画の中に“再生に切り替える条件”を明記することが合理的になりました。
例:
- 耐震診断でIs値0.6未満
- 修繕積立金の不足額が1億円を超える
- 給排水管の全面更新が困難
- 外壁タイル剥落が複数回発生
- 「修繕積立金の適正化」は再生時代の最大テーマ
法改正では、修繕積立金の適正水準がより厳しく見られるようになりました。
再生を選択する場合でも、
- 建替え準備金
- 一棟リノベーションの初期費用
- 敷地売却までの維持費
など、資金計画が不可欠です。
つまり、 修繕積立金は「修繕のため」だけでなく「再生のため」にも必要な時代になりました。
- 仙台のマンションが直面する“地域特有の再生課題”
私が活動する宮城県特にマンションの多い仙台市は以下のような地域特有の再生課題があります。
- 地震発生リスクが高い地域
宮城県は地震リスクが高く、耐震性不足は再生判断の重要な要素となります。
- 外壁タイル剥落のリスク
寒暖差が大きく、凍害によるタイル剥落が起きやすいです。 →「瑕疵除去は3分の2決議で可能(マンション標準管理規約第47条第4項第1号イ)」となりましたので、対象となる管理組合は是非ご検討頂ければと思います。
- 修繕積立金不足の物件が多い
地方都市では管理費・積立金が低く設定されがちで、再生の議論が避けられやすいです。
- まとめ:長期修繕計画は「60年の安心」をどう描くか
今回の法改正は、 “修繕を積み重ねるだけの時代”から “修繕と再生を選択できる時代”への転換です。
長期修繕計画は、建物の寿命を伸ばす計画ではなく、 未来の選択肢を広げる計画へと進化していますので、管理組合の役員の皆さまはこの機会に是非ご検討してはいかかでしょうか。
mishima
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