マンション管理士の三島です。今回より『マンション管理士の視点で読み解く』と題して、マンション管理に重要な事柄(新聞記事等)をシリーズ化していきます。気になる情報があればマンション管理士の目線で投稿したいと思っております。
第一弾は
マンション大規模修繕工事談合事件~東海地方3県~からこれからの大規模修繕工事を考えるです。
2026年7月28日、公正取引委員会は愛知・岐阜・三重の東海3県で、施工会社と設計コンサルタント計20数社(報道によっては28社)に立ち入り検査を行いました。疑いは独占禁止法違反(不当な取引制限=談合)。 これは関東地方での調査(施工会社36社+設計コンサル2社=計38社、課徴金約16億円)に続く全国的な広がりです。
マンション管理士としてこの事件を読むと、単なる「業界の不祥事」ではなく、管理組合の意思決定構造そのものが問われていると強く感じます。
1. 今回の談合の“構図”はなぜ起きたのか
① 設計コンサルタントが黒幕化する構造的要因
本来、設計コンサルは管理組合の味方であり、
- 劣化診断
- 仕様書作成
- 見積もり比較
- 工事監理
を担う「チェック役」です。
しかし東海地方の事案では、 設計コンサル●.●.●が施工会社に情報提供し、受注調整に関与した疑いが指摘されています。
さらに、関東の事案では 施工会社から工事代金の5〜20%のバックマージンを受け取っていた疑いも報じられています。
つまり、
審判役が選手と結託していた という構図です。
② 設計監理とコスト監査を同一主体に任せる“構造的欠陥”
多くの管理組合では、
- 設計監理(仕様を決める)
- コスト監査(見積の妥当性をチェックする)
を同じコンサルに委ねています。
これは
自分で決めた仕様の妥当性を自分でチェックする という矛盾した構造であり、談合の温床になります。
2. 区分所有者が受ける“実害”はどれほどか
談合による工事費のつり上げは1〜2割とされ、 100戸規模で工事費1.5億円なら1500〜3000万円が余計な負担になります。
これは
- 修繕積立金の不足
- 追加徴収
- 管理組合財政の悪化
- 中古マンションの資産価値低下
に直結します。
⚠️ 3. 東海地方の事件が示す「全国化する談合リスク」
東海地方の立ち入りは、 関東の調査過程で同様の疑いが浮上したため行われました。
つまり、
地域固有の問題ではなく、業界構造の問題 であり、全国の管理組合が同じリスクを抱えているということです。
4. マンション管理士として考える「管理組合が今すぐやるべきこと」
① 設計監理とコスト監査の“役割分離”
- 設計監理:建築士
- コスト監査:施工管理技士
というように、別主体に分けることが最重要です。
② コンサルの報酬体系をチェックする
- 工事金額連動型(成功報酬型)はNG
- 定額制+施工会社からの紹介料なしが必須
③ 発注プロセスの透明化
- 仕様書の公開
- 見積比較表の第三者チェック
- 理事会の議事録・選定理由の記録徹底
- プロポーザル方式の導入(国交省も推奨)
④ セカンドオピニオンの導入
設計コンサルと利害関係のない第三者による
- 見積妥当性チェック
- 仕様書の公平性チェック は談合抑止力として非常に強力です。
⑤ “なりすまし住人”などの不正介入への警戒
関東では施工会社社員が委員会に潜入し議論誘導した事例も報じられています。 委員会メンバーの確認や議事録の透明化が必須です。
5. これからの大規模修繕は「管理組合の自衛力」が鍵になる
高経年マンションの増加により、修繕需要は全国で急増しています。 その中で、“専門家に任せるだけ”では資産を守れない時代 に入っています。
マンション管理士としては、
- 発注の透明化
- 役割分離
- 第三者性の確保
- 合意形成の支援
- 修繕積立金の健全性チェック
を通じて、管理組合が談合リスクを最小化できる体制づくりを支援することが使命と思います。
✨ まとめ:談合事件は「管理組合のガバナンス改革」を促す警鐘
東海地方の談合事件は、 管理組合が“丸投げ”を続ける限り、同じ構図が繰り返される ことを示しています。
これからの大規模修繕は、
管理組合が主体的に学び、選び、チェックする時代へ。 マンション管理士はその伴走者として、 透明で公正な修繕プロセスを設計する役割 を担っていく必要があります。
mishima
最新記事 by mishima (全て見る)
- シリーズ:マンション管理士の視点で読み解く① - 2026年8月8日
- 長期修繕計画③ - 2026年7月28日
- 長期修繕計画② - 2026年7月18日
- 「マンション 狙われる修繕積立金」を読んで - 2026年7月8日
- 今回の大規模修繕工事「排除命令処分案」についてマンション管理士ができること - 2026年6月29日







