外壁タイル改修工事

外壁タイル改修工事についてご説明します

特殊建築物定期報告制度の見直しについて

特殊建築物定期報告制度の見直し

分譲マンション・賃貸マンションなどを含む特殊建築物については、建築基準法の定めにより、建築物や昇降機などの定期的な調査・検査の結果を報告することを所有者・管理者に義務付けています。
従って建物の所有者・管理者は、定期的に専門技術を有する資格者(一級建築士・二級建築士など)に調査・検査させ、その結果を特定行政庁に報告しなければなりません。

これは所有者・管理者に課せられた義務であり、定期報告すべきであるのに報告をしなかったり、虚偽の報告を行った場合には、罰則(百万円以下の罰金)の対象となります。

近年、定期報告が適切に行われなかった事が一因となり、建築物や昇降機などの事故が多発している事から、平成20年4月1日以降定期報告制度が見直されることとなりました。

見直しの内容についてのポイント

定期調査・検査の項目、方法、是正の必要の要否の判定基準を、

  • 特殊建築物等(劇場、映画館、病院、ホテル、共同住宅、学校、百貨店などで一定規模以上のもの)
  • 昇降機
  • 遊戯施設
  • 建築設備

について定められています。この中で、分譲マンション・賃貸マンションなどで最も重要な項目は以下の通りです。

外装磁器タイルなどの劣化・損傷

【これまで 】
手の届く範囲を打診、その他を目視で調査し、異常があれば「精密調査を要する」として建築物の所有者に注意喚起。

【平成20年4月1日以降 】
手の届く範囲を打診し、その他を目視で調査し、異常があれば前面打診などにより調査し、加えて竣工、外壁改修などから10年を超えてから最初の調査の際に全面打診などにより調査。

従って、竣工後10年を経過した特殊建築物等で外壁改修工事を行っていない場合、または大規模修繕工事などで外壁改修工事を行ってから10年を経過した場合、全て外壁の調査・検査が必要で特定行政庁への報告が義務付けれれました。
調査の方法は仮設足場・ゴンドラを使用した打診・目視調査、または赤外線を使った調査などが該当します。

定期報告制度見直しのポイントPDF(629KB)はこちらから

外壁磁器タイル改修工事の内容について

磁器タイルの劣化現象

磁器タイル浮きの原因

コンクリート躯体とタイル張り仕上げなどの仕上げ層との隙間(浮き)を発生させる原因は次の通りです。
浮きは外壁の剥落に繋がる危険度の高い要因です。

  • 温度差によるムーブメント
    日射を受ける事によって仕上げ層は熱膨張が生じ、夜間は逆に躯体より先に収縮する事のくり返しにより付着力が低下します。
    また、磁器タイルとコンクリートの熱による伸縮係数の違いも生じ、モルタルと磁器タイルの間には隙間が生じやすくなります。
  • 地震などの外力によるムーブメント
    建物の変形、揺れ、歪みの発生に伴うコンクリート躯体と仕上げ層との付着力が低下します。
  • 湿度によるムーブメント
    磁器タイル目地などからの吸水により膨張が生じ、乾燥する事によって収縮するこのくり返しにより付着力が低下します。
  • 凍結融解によるムーブメント
    ひび割れ部から進入した湿気が凍結(膨張)・融解(収縮)を繰り返す事により付着力が低下します。
  • 鉄筋の被り厚さ不足
    鉄筋の被り厚さ不足により鉄筋に錆が発生し、膨張する事によってコンクリート躯体と仕上げ層を押出して浮きを発生させます。
  • 施工不良または建物の不同沈下
    コンクリート躯体のジャンカ・異物の混入・過度の深目地なども付着力を低下させる要因となり、また、建物の不同沈下によって外力が発生し同様な浮きが生じます。

以前、建物の躯体は型枠の精度不足のため段差や凹凸が残り、かつては磁器タイルを貼るために厚さ20~30mm前後のモルタル仕上げが一般的に行われていましたが、最近では精度が向上して2.0~3.0mm程の薄塗りが主流となりました。
しかし、コンクリート躯体とモルタル層の浮き、または磁器タイルとモルタル層の浮きは同様に発生しています。

磁器タイル浮きの事例

  • 磁器タイル浮きの事例1

    躯体あるいは下地モルタル層からの剥離・落下

  • 磁器タイル浮きの事例2

    剥離・落下したタイルの断片(異物の混入も)

  • 磁器タイル浮きの事例3

    タイル浮き・調査・マーキング

  • 磁器タイル浮きの事例4

    磁器タイル浮き撤去後(磁器タイル側からの浮き)

磁器タイルのひび割れ・欠損の発生について

タイル張り仕上げのひび割れ現象は、発生要因によってより微細なひび割れから貫通するようなひび割れなどがあります。
そのひび割れにより雨水が浸入して漏水したり、鉄筋などを腐食させ錆汁が流出している等の現象が見られます。

また、タイル仕上げの欠損は、タイル陶片、タイルの張り付けモルタルと下地モルタル間、タイルの下地モルタルとコンクリート界面等欠損の他に鉄筋や手摺等の埋設部分が腐食膨張により押出され、その部分が欠損して浮き・剥落等の現象が見られます。

磁器タイルひび割れ・欠損の事例

  • 器タイルひび割れ・欠損の事例1

    磁器タイル面のひび割れ

  • 器タイルひび割れ・欠損の事例2

    磁器タイル面のひび割れ

  • 器タイルひび割れ・欠損の事例3

    磁器タイル面の欠損

  • 器タイルひび割れ・欠損の事例4

    磁器タイル面の欠損

磁器タイルの改修工法

浮き部

アンカーピンニング注入工法
浮き部に対し、適合する材料の注入とアンカーピンの併用により接着・固定し、浮き部の剥落を防止する工法。
外壁タイルの場合、最も一般的な二丁掛けタイル(50mm×100mm)では1平方メートルあたり25孔(全面注入)が基本となっています。

ひび割れ部

タイル張り仕上げのひび剥がれ補修の際には、割れたタイルを電動工具や手工具で撤去します。
その場合、タイルとモルタルあるいは躯体コンクリートにひび割れが入っているケースがあり、漏水を防止して、強度を保つ事を目的に、ひび割れを補修する必要があります。

樹脂注入工法
ひび割れ部に対し、シリンダーを用いてエポキシ樹脂を低圧注入し、接着固定により雨水の浸入を防止する工法。
(躯体のひび割れ幅が0.3mm~1.0mmで挙動が比較的少ない場合)。
Uカットシール材充填工法
ひび割れ部に対しディスクサンダーなどでU型溝を設け、シーリング材などを充填して表面をモルタル仕上する工法。
(躯体のひび割れ幅が1.0mm以上で挙動が予想される場合)。
埋め戻し工法

錆汁の流出ヶ所などを除去し、腐食した鉄筋の防錆処理の上その部分を埋め戻してタイルを張替え修復する工法。

※磁器タイルのひび割幅が0.2mm以上の場合は雨水が浸入する可能性があり、大規模修繕工事の際の仕様では一般的に貼り替えを行っています。
また、微細なクラックでも今後幅が拡大する可能性もあり、場合によってはひび割れた磁器タイルを全面的に張り替える場合もあります。

欠損部

充填工法
タイル陶片が欠損している下地を清掃してプライマーを塗布し、ポリマーセメントや軽量エポキシ樹脂モルタルを充填する。
張替え工法
欠損部に対してポリマーセメントモルタルやタイル用エポキシ樹脂低圧注入を充填したり、鉄筋や手摺などの埋設部分が腐食膨張により欠損している部分に対し、防錆処理後に同上の材料を充填して修復する。

磁器タイルの改修の工程

磁器タイル浮き 躯体のひび割れ エポキシ樹脂注入工法

躯体のひび割れ幅は0.3mm以上1.0mm未満を対象とし、注入剤はエポキシ樹脂接着剤を使用し、注入方法はひび割れの幅により手動式注入または自動式低圧注入などによります。
ひび割れに対する仮止め(樹脂の漏れ止め)シールは注入圧に耐えられる接着力と、剥れが容易な材質のものとします。
ひび割れ補修の後は新規磁器タイルを張って仕上げます。

  • 磁器タイル浮き 躯体のひび割れ エポキシ樹脂注入工法 手順1

    台座の取付けと仮止めシール処理

  • 磁器タイル浮き 躯体のひび割れ エポキシ樹脂注入工法 手順2

    低圧注入シリンダーの取付け

  • 磁器タイル浮き 躯体のひび割れ エポキシ樹脂注入工法 手順3

    エポキシ樹脂注入完了

磁器タイル浮き 張替え工法

躯体のひび割れ幅は0.3mm以上1.0mm未満を対象とし、注入剤はエポキシ樹脂接着剤を使用し、注入方法はひび割れの幅により手動式注入または自動式低圧注入などによります。
ひび割れに対する仮止め(樹脂の漏れ止め)シールは注入圧に耐えられる接着力と、剥れが容易な材質のものとします。
ひび割れ補修の後は新規磁器タイルを張って仕上げます。

  • 磁器タイル浮き 張替え工法 手順1

    クラック箇所をマーキング

  • 磁器タイル浮き 張替え工法 手順2

    タイル目地カター入れ

  • 磁器タイル浮き 張替え工法 手順3

    タイル撤去

  • 磁器タイル浮き 張替え工法 手順4

    接着剤とバイブレーターて貼り付け

  • 磁器タイル浮き 張替え工法 手順5

    モルタルで目地詰め

  • 磁器タイル浮き 張替え工法 手順6

    モルタルをふき取って完了

磁器タイル浮き ピン注入工法

浮きの対象は、タイルと張り付けられたモルタル層間の浮きと、モルタル層とコンクリート躯体の界面の浮きとします。
振動ドリルなどで深さ50~60mmに穿孔し、切粉を清掃した後に手動ポンプでエポキシ樹脂を注入します。

外壁磁器タイルの場合は落下防止のため1㎡あたり25孔(全面注入)が基準となっており、1孔あたりの注入量は30gとなっています。
注入後はSUS304製4φ×50mm(標準)の全ネジピンを挿入し、穴埋めを行って完了します。

  • 磁器タイル浮き ピン注入工法 手順1

    クラック箇所をマーキング

  • 磁器タイル浮き ピン注入工法 手順2

    タイル目地カター入れ

  • 磁器タイル浮き ピン注入工法 手順3

    タイル撤去

  • 磁器タイル浮き ピン注入工法 手順4

    接着剤とバイブレーターて貼り付け

  • 磁器タイル浮き ピン注入工法 手順5

    モルタルで目地詰め

  • 磁器タイル浮き ピン注入工法 手順6

    モルタルをふき取って完了

磁器タイル改修工事のポイント

磁器タイルの調査診断と実費清算方式について

特殊建築物定期報告制度の見直し

マンションの大規模修繕工事にあたっては、コンサルまたは設計事務所などにより調査・診断・修繕設計が行われますが、実際の調査の段階では磁器タイルの全面を調査する事は困難です。
全数を調査する場合には仮設足場の架設またはゴンドラの設置が必要で、多額の費用と時間を必要とします。

大規模修繕工事のための一般的な調査、診断の場合は調査員の手の届く範囲での打診や目視が中心となりますが、磁器タイルの場合、調査範囲は屋上パラペット廻りや開放廊下や外階段の手摺壁などに限られます。
特に立ち入りが難しい南面バルコニー側磁器タイルは調査が困難です。したがって、磁器タイル面全体の15%程度の範囲で診断し、全体の数量を推測しているのが現状です。

特に磁器タイルの場合には双眼鏡などを使っても正確なひび割れの把握は難しく、浮きに関しては東西南北面によって浮きの状況が異なり、詳細な数量把握はより困難となります。
特にタイル浮きは施工の段階でのタイル張り仕上げ状況(施工の時期または天候など)による要因も影響し、施工の段階で予想以外のトラブルに発展する事もあり、いろんな要素が関係します。
(例えばモルタルの施工不良による浮きなど)

管理組合様やオーナー様は全体の予算が限られている事から、金額の不確定な実費精算方式を認めて頂けないケースもあります。
しかし、小規模なケースを除いて無用なトラブルを避ける意味でも、また予算を適切かつ明確に配分するためにも是非ご検討をお願いしたい次第です。

磁器タイル補修の設計数量について

磁器タイルの調査診断に基づいたひび割れ補修の設計数量(見積書の内訳)は、基本的にはタイルの張替え枚数で表記します。
例えばタイルの張替えが3000枚であれば、最も一般的な2丁掛けタイル(H50mm×W100mm)の場合、1㎡あたり200枚ですからトータルの㎡数では15.0㎡となります。

ここで注意が必要なのが施工単価で、1枚あたりの撤去・張り戻し費用とタイルの材料費の合計額が相当します。

タイルの材料費は近似色の市販品を使用する場合と、色とパターンを指定してタイルメーカーに特注する場合で異なります。
マンションの大規模修繕工事ではタイルの色違いは避けたい意向が強く、殆どがメーカー特注となり割高になります。

この場合、設計数量が1㎡単位になっているケースもありますので、内訳書にある㎡単価が妥当なものであるかどうか十分な確認が必要です。

また、ひび割れの入ったタイルの張替えの場合、ひび割れの補修数量はm単位で表記されていますが、それに伴うタイルの張替えが必要です。
例えば10mのひび割れ補修があれば、ひび割れは縦か斜めに入っている事が多いため、(タイルの縦は50mmのため)200枚の張替えが必要になります。

タイルの浮きの場合は、対象となる範囲をテープなどでマーキングしてナンバーを記入し、そのトータルの面積を㎡単位で表示して設計数量とします。
その設計数量に㎡あたりの浮き注入の単価を掛けて予算金額を算出します。