外壁塗装工事
外壁塗装工事について
マンションの大規模修繕工事は磁器タイルの改修が多くなりましたが、バルコニーや開放廊下の天井や軒天・手摺壁の内側や手摺の笠木等は塗装の塗り替えとなります。
また、内部階段の壁や天井も同様で、特に外部に面する部位は紫外線の影響を受け、チョーキングや塗膜の変退色が起こって劣化が進行します。
また、仙台のなどでよく見られる著しい外壁の退色は、沿岸部特有の塩害による塗膜の劣化と考えられます。
竣工当時に塗られた塗料の種類にもよりますが、比較的にに耐候性の低いアクリル樹脂塗料が用いられて入るケースが多く、8~10年位で塗膜の保護機能は失われているものと思われます。
マンションの外壁塗装面は吹付けタイルが主流ですが、大規模修繕工事の塗替えの場合には、より耐候性の高い塗料が求められ、現在ではより高機能なシリコン樹脂塗料が主流となっています。
新築時と異なり、外壁の塗装工事を行なうにあたって、下地調整は大変重要な分野です。
また下地調整の多くは手作業によるものや、機械を使って行なうものから様々であり、その用途によって使い分けられます。
高圧洗浄
高圧洗浄の目的
高圧洗浄機により、外壁・屋根などの場所に付着した、汚れ・ホコリ・藻・コケ・カビ等のを洗い流します。
この作業を怠ると、塗り替えても汚れの上に膜を貼っているだけで何の意味もありません。
高圧洗浄は塗替えの工程で大切な要素の一つです。
もしこの工程が不十分なまま塗装を行えば、塗料の密着不良によりやがて塗膜剥れなどを引き起こす要因ともなります。
また、高圧洗浄では隣家や駐車場の車に洗浄水が飛散しないように足場ネットを設営したり、車用ビニールシートでカバーするなどの防止対策を行います。
高圧洗浄によるメリットは次のような点にあります。
- 手作業だけでは補えない箇所の下地調整が可能である。
- 網戸や細かい部位に対して有効であり、施主様から喜ばれる。
- 圧力調整が可能で下地を損傷することなく、劣化した塗膜も剥離が可能となる。
- 作業時間の短縮につながる。
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外壁・軒天
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階段踊場
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受水槽FRPタンク
下地処理
下地処理の重要性
塗装でさらに大切なこと事は下地処理と呼ばれる工程です。
この作業の目的は建物の素地を平滑にする事により、モルタル、鉄部などの現状を塗装にふさわしい状態に調整する事で、塗料の機能性を長持ちさせる事にあります。
塗装工事はよくお化粧にたとえられます。
荒れた地肌にどんな高級な化粧を厚く塗っても化粧のノリは悪く長持ちしません。
つまり、下地処理が適切でないと密着が悪くなったり、仕上がりが悪いという事に直結します。
外壁塗装の耐久性、美観の本当の良し悪しを決めるのが下地処理で、適切な処理を行なう事により、きれいで長持ちする塗装が可能となります。
下地処理の良し悪しで建物の寿命が伸びるので、それぞれの建物に合った適切な処理が大切です。
塗装工事はこうした目には見えない部分に気を使う事が大切で、一つ一つ手作業進められる塗装工事では現場職人の技量、丁寧さ、そしてモラルが特に問われる工事なのです。
皮すきなどの手工具によるケレン
高圧水でも落ちない頑固な汚れや、場所的に水の使用が出来ない場合に取られる方法で、皮スキ・ワイヤーブラシ・マジックロン(セラミックでできた網状の道具)などにより汚れ、はがれた塗膜などを削り落とします。
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マッジクロン
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皮すき
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ペッパーかけ
下塗り材について
基本的に下塗り材は下地への吸い込み防止し、塗膜を密着強化して上塗りを長持ちさせ、きれいに仕上げるために重要なものです。
つまり、下地材と上塗り材の密着力・定着性を良くし、仕上の基礎となるものです。
上塗り材は耐候性、低汚染性、防カビ、防藻性等の機能がありますが、密着力に欠けていますので、単に上塗り材だけでは塗膜を被せたという事でしかありません。
施工にあってはメーカーの仕様書に基づいた工程と塗布量・希釈率を守る事が重要です。
最近の下塗り材はクラック追従性のある微弾性フィラーが主流になっています。
主な下塗り材
- シーラー
- シーラーを塗る大きな目的は上塗り材が下地に浸透するのを防ぎ、上塗り材との密着力を高めて塗膜を安定させる事にあります。
ただし、水性の薄い下地材のため、微細なクラックに追従する働きはありません。
また、下地に浸透して固める含浸型のシーラーもあります。 - フィーラー
- 下地の状態を整えるためのコテ塗り材(下地調整材のこと)で、水に溶いた小麦粉のようで少し厚く塗る事が出来、多少の凹凸を埋めたり、巣穴や小さなひび割れを埋める事が出来ます。
- 微弾性フィーラー
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最近主流になっている下塗り材です。
弾性のためシーラーより膜が厚く、小さなひび割れや凹凸を埋める機能があります。
ただし、下地との密着力や下地を固める働きはシーラーより弱く、既存塗膜の塗替えなどに使います。
乾燥後も弾力性が残っているため微細なクラックに追従する事が出来ます。
中塗り・上塗材について
塗料の種類別耐久性・耐候性について
マンションなどの塗替え工事の場合一般的に、中塗は上塗りと同じ塗料を使います。
上塗り剤を二度塗りする事によって塗膜厚を最大限に確保し、より耐久性を持たせた仕上がりになります。
これも下塗りと同様ローラーまたは刷毛塗りを基本とします。もちろん軒裏・天井も同様です。
なお、新築工事の際には吹付け工法によってベースパターン(ゆず肌のような凹凸模様)が付けられ、その後にアクリルまたはウレタン樹脂塗料が塗られています。
しかし、現在のマンションの大規模修繕工事では飛散防止のため刷毛・またはローラー工法が主流となり、養生の手間もかかる吹付け工法による仕上げ(中塗り・上塗り)は殆ど行われていません。
また大事なことですが、塗りムラなどをなくし均一で十分な塗膜の厚さを確保するため、どうしても上塗りを2回する事が必要です。
塗料は水性と溶剤型に分類され、その中でも配合されている樹脂(塗膜を作る成分)の種類によってさらに次のように分ける事が出来ます。
種類 | 耐久性・耐候性 | 価格 |
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アクリル樹脂塗料 | ★★ | ★ |
ウレタン樹脂塗料 | ★★★ | ★★ |
シリコン樹脂塗料 | ★★★★ | ★★★ |
フッソ素樹脂塗料 | ★★★★★ | ★★★★ |
- アクリル系樹脂塗料
- 耐候性・耐久性は標準的なレベルで、経済性にも優れバランスのとれた塗料として使用範囲が広い。
しかし耐用年数は比較的短く、5~7年で塗替えの時期となります。 - ウレタン樹脂塗料
- 良く使われるポピュラーな高品質塗料。
耐久性や耐摩耗性に優れ、アクリル系樹脂塗料よりも耐久性があって艶もあり、建物の美観を維持します。 - シリコン樹脂塗料
- 防カビ、防藻、超耐久性、超耐水性などに優れている。
付着した汚れが雨で流れて落ちやすいという特性と透湿性があり、汚れと塗膜の膨れ防止に効果を発揮します。
ランニングコスト的にも優れた超耐久性の塗料。
マンション大規模修繕工事では、主流になっています。 - フッソ樹脂塗料
- 特に耐候性は優れており長期間にわたって艶と輝きが長持ちします。
最近は住宅塗り替え向きの塗料が各種開発されていますが、セラミック系塗料としては最高水準の塗料です。
しかし現状では価格はシリコン樹脂塗料の3倍以上のため、大規模修繕工事で使用される事は少ないのが現状です。
塗り替え推奨時期及びライフサイクルコストの比較
外壁の塗装は、建物そのものを自然の風雨や紫外線その他の自然条件から守り、保護する事を目的としています。
したがって、各種自然条件に対する耐久性が最も重要な要素及び品質となります。
また、塗料の種類によって塗り替え推奨の時期は異なってきますので、ロングコストを考慮した場合のトータル的な比較検討も必要です。
- ウレタン樹脂塗料
- 7年~8年の塗り替え推奨時期 (コンクリート建築の場合)
- シリコン樹脂塗料
- 10年~12年の塗り替え推奨時期 (コンクリート建築の場合) ※40年間で2~3回の塗替えが必要
- フッ素樹脂塗料
- 15年~20年の塗り替え推奨時期 (コンクリート建築の場合) ※40年間で1~2回の塗り替えで済む
※一般的な建物(住宅)の寿命を40年とした場合。
※第1回目の塗替えを竣工後10年目に行った場合。
※上記の塗り替え周期はあくまで概算であり、建物(住宅)の立地や形状、素材の性質によって異なります。
※東京・大阪などの、日本の一般的な気象条件をベースにして算出しています。
北海道・東北・北陸・山間部などの気象条件が厳しい地域や、沖縄などの紫外線強度の高い地域などでは周期が短くなります。(日本ペイント株式会社 製品カタログより抜粋)
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紫外線による劣化の進行
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塗料の種類による耐候性
水性反応型と溶剤型について
<水性塗料は、溶剤型塗料に比べて性能が落ちるか?>
水性塗料は水で薄めることができる塗料、溶剤型塗料は溶剤(シンナー)で薄める塗料です。
塗料そのものの性能は、主な材料である樹脂が決定します。
「水性だから弱い…」というのは間違いです。
重要なのは、塗膜がどんな樹脂系の塗料でつくられるか、ということです。
集合住宅の塗り替えには、臭い、人体への影響、環境への影響を考慮に入れると、むしろ水性塗料の方が適しているといえます。
現在では環境への配慮から、自動車等の工業製品でも水性塗料への切り替えが進んでいます。
もともと外壁に使用されている塗料は耐久性、耐候性では圧倒的に溶剤型が優れていました。
しかし近年の環境問題(作業時における匂いの問題、シックスハウス症候群、余った塗料の廃棄の問題等)の意識の高まりにより、技術開発の進歩により水性の優れた塗料が開発されています。
現在では戸建住宅は勿論、マンション、アパートなどの集合住宅の外壁・軒天の殆どは水性の塗料が使用され、今では水性と言っても溶剤型塗料に引けを取らない機能を持っているといっても過言ではないでしょう。
マンションの外壁や手摺壁・軒天などは一液型の水性塗料が一般的で、最近では外壁の吹付けタイル面の塗替えには高耐候性でランニングコスト的にも優れた水性シリコン樹脂塗料(アクリルシリコン樹脂塗料とも呼ばれています)が多く使われています。
ただし、紫外線・降雨・降雪の影響を特に受け易い屋根または、コロニアル屋根の劣化やトタン屋根の発錆の進行が早く、塗膜の密着性・安定性についてはいまだに弱溶剤系の塗料に信頼性があり、弊社では特別の事情が無い限り弱溶剤系塗料を使用しています。(コロニアル屋根またはトタン屋根の場合)
また、水性系のウレタン樹脂塗料による鉄部塗装も可能ですが、結露などが起き易い部位での使用で剥離などが発生するケースもあります。
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微弾性フィーラー塗布完了
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中塗り
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上塗り完了
バルコニー・共用廊下軒天・階段天井の塗料の種類
最近は塗料の開発が進み、耐候性、低汚染性、防カビ。防藻などの一般的な機能の向上に付け加え、多くの塗料に付加価値を加えた製品が登場しています。
<カチオン型アクリル樹脂塗料>
風雨によって湿気を帯び易く塗膜の膨れまたは剥れが発生し、カビなども発生する事もあります。
また、廊下床面の防水性が低下して塗膜剥れが発生する場合もあります。
軒天部は、直接雨に当たる事はありませんが、一般外壁と異なり水分が溜まり易い環境にあるため、透湿性のある材料を選定する事が大事です。
この現象を防ぐため、透湿性と付着力に優れたカチオン型アクリル樹脂塗料(水性または弱溶剤系)が一般的に使用されています。また、防カビ性やヤニ・しみ止めの機能も要求されます。
また、塗り替えとなると下地の劣化が進行し、塗膜に欠陥が生じている場合が多いため、、これらを解消するための厚付けタイプの塗料もあります。
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RC階段踊場天井の塗膜剥れ
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バルコニー軒天部の塗膜剥れ
塗料と環境問題・お願いなど
近年、シックハウス症候群が社会的に関心を集めています。
これは、建材などから発する揮発性有機化合物などの化学物質が人体に影響し、発疹や目眩、吐き気などの体調不良など、化学物質過敏症などの症状を引き起こすものです。
新築の家ほど過敏症になる例が多く、リフォームした幼稚園、保育園、学校、各種ホーム等で問題視されています。
これらは、室内の空気質に関係する問題として、室内に使われる塗料についても、揮発性有機化合物(VOC)をなくした塗料ゼロVOC塗料が求められています。
室内で使う塗料などはF☆☆☆☆(フォースター)を最高に基準が出来ました。
しかし、外部については空気がこもる事がないので今の所基準は設けられていませんが、臭いなどの体で感じられる問題も存在する事から、その扱いは慎重に行なう必要があります。
塗装工事の際の注意点
マンションの大規模修繕工事の場合居室部分の塗装工事はなく、外部に面したバルコニーや開放廊下周り・階段室などが中心になります。
従って水性塗料を中心に施工するため、シックハウス症候群等の発生は少なく、日常生活の上では殆ど支障になる事はありません。
ただ、水性塗料でも多少含まれた樹脂の臭いは防げません。
臭いに敏感な方やお子様またはアレルギー体質の方は、施工中の際には窓を閉め切るなどご協力をお願いいたします。
もし、お気付きの点がございましたら現場代理人が迅速に対応いたしますので、お気軽にご連絡下さい。
塗装の際の養生について
塗装を行うに当たり予めビニールシートでの養生を行いますが、サッシ廻りや玄関扉も養生しますので一時的にご不便をおかけする事があります。
特に、バルコニー側の塗装の場合にはサッシ全面をビニールシートで覆いますので、施工中には窓を開ける事が出来ません。
また、一時的にエアコンが使用できないケースもありますので、施工の際には事前に告知をさせて頂きますので、チラシや掲示板のお知らせなどをご確認願います。
また、バルコニー床の防水工事の時と同様、期間中の洗濯物干しも出来ませんので予め御了承ください。