シール打替え工事

シール打替え工事についてご説明します。

シーリングの重要性

シーリングの重要性マンションのシーリング工事とは、建物の外壁を構成するコンクリート・モルタル・ガラス・サッシ・パネルなどの各種部材間(目地)に防水性・気密性を確保する目的で行う工事です。

建物の目地は気温や温度の変化、建物の向きや立地条件によって、紫外線による劣化は避けられませんが、シーリング材にはそれらの動きに追従する柔軟性が必要とされます。

また、外壁目地の役割は強度の弱い部分を守るため、動きを逃がして建物を守る事にあります。
従って、シールが劣化し、動きを逃がす事が出来なくなると建物の弱い部分が顕著化し、建物劣化の進行が早まって行きます。

マンションの磁器タイル面や吹付けタイル面には伸縮目地が設けられ、躯体の挙動や乾燥収縮による伸縮からタイル面・吹付けタイル面を保護し、タイルのひび割れや欠損を防ぐために機能しています。

シール打替え工事の対象となる主な部位

  • シーリング打替え工事の対象となる主な部位1磁器タイル伸縮目地
  • シーリング打替え工事の対象となる主な部位2外壁吹付けタイル伸縮目地
  • シーリング打替え工事の対象となる主な部位3外壁窓サッシ廻り下端
  • シーリング打替え工事の対象となる主な部位4バルコニーサッシ枠廻り
  • シーリング打替え工事の対象となる主な部位5手摺壁目隠し板・手摺支柱根廻り
  • シーリング打替え工事の対象となる主な部位6外壁各種ガラリ廻り
  • シーリング打替え工事の対象となる主な部位7玄関扉枠廻り
  • シーリング打替え工事の対象となる主な部位8共用廊下パイプシャフト廻り
  • シーリング打替え工事の対象となる主な部位9共用廊下サッシ廻り

シール打替え工事の必要性

このタイル目地には幅10.0~20.0mm、深さ10.0mm位のシールが打たれていますが、磁器タイル面の場合には露出しているために紫外線の影響を受けて劣化し易い部位です。
築後12年位になると油分が抜けてシール自体が硬化し、目地の伸縮に対応出来なくなってひび割れや隙間が発生し易くなります。

そのまま放置するとシールの剥離や破断に至り、目地の内部に雨水が侵入して躯体のひび割れを通過し、やがて室内への漏水に繋がる可能性があります。
そのため、マンションの大規模修繕工事などではシールの補修は必須項目となっており、足場またはゴンドラを設置しての撤去・打替え作業が行われます。
簡易的な工法としては既存のシールを撤去せず、その上から新たにシールを被せる打ち増しいわゆる「増打ち」もありますが、シール剥れや耐久性の点で不安が残り、殆どの場合は撤去・打替えが常識となっています。

なお、シールの打ち込みの際には3面接着と2面接着の違いがあり、磁器タイル目地の場合には3面接着が一般的です。
3面接着とは目地の内面両側以外に底の面も接着する打ち方で、余り伸縮幅の大きくない磁器タイル目地の場合、耐水性を重視する事が理由の一つです。

反面、オフィスビルのカーテンウォール(金属パネルなど)の伸縮目地などは伸縮幅が大きく、3面接着ではシールの破断や剥離の原因となるため、目地の内部両側のみで底の部分にバックアップ材(スポンジやテープの様な物)を埋め込み、2面接着としています。

磁器タイル目地シール打替えの工程

  • 磁器タイル目地シール打替えの工程11.施工前
    紫外線により劣化が進行し、硬化・ひび割れ・破断・チョーキングなどが発生し易くなります。
  • 磁器タイル目地シール打替えの工程22.既存シール撤去
    劣化した既存シールの両側からカッターを入れ、プライヤーなどを使ってきれいに撤去します。
  • 磁器タイル目地シール打替えの工程33.プライマー塗布
    マスキングテープを貼って接着を確実にするためのプライマーを塗布します。
  • 磁器タイル目地シール打替えの工程44.変成シリコン充填
    撹拌した変成シリコンをガンにセットして充填します。
  • 磁器タイル目地シール打替えの工程55.ヘラ押さえ
    充填した後すぐにシール材をヘラで抑えて平滑にし、硬化しないうちにマスキングテープを撤去します。
  • 磁器タイル目地シール打替えの工程66.施工完了

バルコニーサッシ廻りシール打替え工事の工程

  • バルコニーサッシ廻りシール打替え工事の工程11.施工前
    南面バルコニーのシールは紫外線の影響を受けやすいため、大規模修繕工事では撤去打替えが一般的です。
  • バルコニーサッシ廻りシール打替え工事の工程22.既存シールの撤去
    カッターナイフやプライヤーを使ってきれいに撤去します。既存シールが残っていると密着性の低下などが起きるため、確実に除去します。
  • バルコニーサッシ廻りシール打替え工事の工程33.変成シリコン充填
    ガンに変成シリコンをセットして充填します。
  • バルコニーサッシ廻りシール打替え工事の工程44.ヘラ押さえ
    ヘラ押さえで平滑に仕上げ、直後にマスキングテープを剥がして完了します。
  • バルコニーサッシ廻りシール打替え工事の工程55.施工完了
    シールの打替えの後に塗装仕上げを行います。塗膜によって新しいシールは紫外線から守られます。
  • バルコニーサッシ廻りシール打替え工事の工程66.施工完了 下端
    サッシ下端にはアルミ水切りの上下に2本シールが打ち込まれています。

各種シール材の特徴

建物には水密・機密材として、いたる所にシーリング材が使用されています。
表面に見える化粧シーリングや塗装材で被覆されている隠蔽シーリングもあり、それぞれの目的に合わせて種類も使い分けされています。

シーリング材は紫外線、温度や水分などの影響を直接長期間受けるため、本来の機能維持には厳しい条件下にあります。

建築物の目地は部材の伸縮や地震力により常に動きが生じ、シーリング材はそれぞれの動きに追従することで防水機能を維持しています。

変成シリコーン系
シリコン系ではあるが、塗装を可能にした材料で、耐候性にも優れており、露出仕上げも可能。

低層の建物から超高層のビルまで用いられ、外壁の補修、タイル壁の伸縮目地やサッシ周りのシールなど幅広い用途に用いられる。

大規模修繕工事などでは最も多く使われる代表的なシール材です。

シリコーン系
一般的に最も認知度の高い材料で、建築工事においてはガラスとサッシのシールなど、施工後に塗装仕上げが不要な部分に用いられる。

しかし、塗料による仕上げが不可能なためとブリードが起きやすい事から、外壁補修にはあまり用いません。

ウレタン系
紫外線に弱くて塗装による仕上げが必要であり、経年により材料に含まれる可塑剤が塗膜を侵食、「ブリード」を起こし、建物の美観を損ねてしまう。

改良された「ノンブリード」タイプは可塑剤を含まないため、ブリードも発生せず、長期間美観上の問題も起こらず改修工事には優れた材料です。

アクリル系
塗料による仕上げが可能であるが、耐伸縮せん断・変形ともに低いため外壁の補修には用いない。
アクリルウレタン系
ポリウレタンの一部をアクリルで置き換えた2成分形シーリング材で、硬化剤と反応硬化する反応硬化形。

ALC造の塗装がある場合に多用されます。

シールの耐久性及び打替え工事のポイント

シール材の耐用年数

シール材の耐用年数一般的なシーリングの耐用年数は7~8年位と言われていますが、磁器タイル打継ぎ目地の様に露出している場合と、吹付けタイル打継ぎ目地の様に塗膜で保護されている場合とでは異なります。

また、紫外線の影響を受けやすい南面バルコニー側のサッシ廻りと、北面で殆ど紫外線が直接当たらない解放廊下のサッシ・鋼製建具廻りのシールでは劣化の進行状況が異なります。

また、強風が当たる場所、紫外線が強く当たる西日の射す場所、微細な施工不良などによっては、もっと早い段階からシーリングの劣化などが始まる場合も数多く見受けられます。

反対に、完成から15年を経ても、問題のないシーリングも数多くあります。

つまり、シーリングは一様に寿命を特定出来るものではありませんが、一般論を言えば10年前後と言うことです。

しかし、どんなに環境が良く、施工状態が良くても20年も劣化もせずに持ち続けると言うことはあり得ないと考え、磁器タイル打継ぎ目地などシーリングを使った建物では、定期的な点検は不可欠となります。

打替え施工上のポイント

打替え施工上のポイント充填されるシール材は1液型と違って硬化が均一で早く、耐候性・接着性に優れた2液型の変性シリコンが多く使用されています。

作業のポイントは充分な目地の清掃の後にプライマーを塗布する事です。

シールの補修方法には既存のシール材の上から新たに充填する「増し打ち」と、既存のシールを完全に撤去し、再充填する「打替え」の2種類があります。
大規模修繕工事の仕様書ではほとんど「打替え」となっていますので、仕様書をよく確認する事とも必要です。

修繕計画上のポイント

修繕計画上のポイント大規模修繕工事では磁器タイル目地・吹付けタイル目地・各種サッシ廻り・鋼製建具廻り・アルミ支柱根回り・ガラリなどが打替えの対象になりますが、全体予算の関係上、第1回目の修繕工事の際にはあまり傷んでいないシールに関しては行わない場合もあります。

仮設足場を必要とする外壁目地・外壁窓廻り・バルコニーサッシ廻りなどは必須項目ですが、比較的紫外線に当たることが少なく、足場を必要としない北面の解放廊下のサッシ・鋼製建具・アルミ支柱・ガラリなどは後からでも施工は可能です。

建物の調査・診断内容にもよりますが、全体の予算配分を考慮しながら劣化の状況を適切に判断し、より無駄のない合理的な修繕計画を練る必要があります。