マンション大規模修繕 知恵袋
2017.02.09
修繕設計の内容とその目的
大規模修繕工事の修繕設計に当たり、建物の調査・診断を行い、どれくらいの修繕が必要なのか、また、そもそも本当に修繕が必要なのかを確認する必要があります。通常は、管理会社、建築設計事務所、施工会社に依頼しますが、管理会社や建築設計事務所は修繕設計全体から施工業者選定のサポートから工事監理まで、一連の業務を契約するケースが多いですが、施工会社では調査・診断・報告書と見積書の提出までは無料のケースも少なく有りません。
この時点での調査では、目視、打診(テストハンマーなどでコンクリートをたたき、その音で浮きや割れなどの不具合を調べる)、物性検査(タイルや塗膜の付着強度を調べる)を行い、これらについては築年数や修繕履歴などを考慮して必要性を判断します。
診断報告書には調査した部位の状況、劣化度、修繕の要・不要、緊急度、必要な修繕の概要などが記載されています。この内容に基づいて改修方法(仕様・工法)を検討する事になりますが、修繕委員会や理事会、区分所有者全員に「なぜ修繕が必要なのか」を理解してもらうことが重要です。
ここで注意すべき点はマンション個々の実情に有った修繕設計がなされているかに有ります。劣化の状況は築年数、立地条件、地域差により異なりますので、必ずしも既に出来ている長期修繕計画の通りにはなりません。
例えば自然劣化が顕著な防水層や塗膜、シーリング材はその劣化度の差が異なり、特に屋上防水層やルーフバルコニーは本当に改修が必要なのかを充分検討する必要があります。潤沢な資金があって区分所有者の合意が得られていれば良いですが、限られた修繕積立金を基にした場合には最低限の保護的な処置を行い、数年後に先送りしても工事は可能なケースが有ります。
大手の管理会社による修繕設計で時々見られますが、どこのマンションも画一的な修繕内容になっており、金額は修繕積立金の上限を大きく超えていたりするケースが散見されます。また、仕様がオーバースペックになっていてコスト高になり、全体的の予算額が割高になっている事も有ります。
また、詳細な調査をしないで修繕計画を立てようとする設計事務所や施工会社がいたり、必要以上に大げさな装置を使った調査を行うケースも有ります。これは一見、良いことに感じますが、お客さまの要望も確かめずに行う事ではありません。確かな調査・診断ノウハウがあれば、大がかりな装置を使わずとも十分に建物の現状を把握することが出来るからです。
また、施工が進んでいる中で追加工事が発生する事が多く、各住戸へ事前のアンケートやヒアリングにより、建物の劣化傾向を把握しておくこ事必要です。例えば、バルコニーや廊下床の水溜りが後で指摘されたりしますが、防水工事の前にモルタルの勾配調整(見積もりに入ってないケースが多い)がされていないと後で対応できません。