仙台市内のビルやマンションなどは外見上大きな被害は見られませんが、先日訪れた分譲マンションの被害は予想を上回っていました。
今回管理会社の依頼を受けて訪れた目的とは、各戸の玄関スチール扉が開かなくなった為、やむなくバルコニーの隔て板をすべて撤去する事です。バルコニーの隔て板の枠はスチールやアルミでできていますが、地震などで玄関扉が開かなくなった場合にはボードを破壊して避難できるようになっています。
各階のバルコニー側には非常時の為床に1ヵ所の避難梯子が設置されており、玄関と共に二方向の避難経路が確保されています。マンションによっては廊下側にアルミサッシの窓などが有れば面格子を破壊して脱出もも可能ですが、このマンションでは窓がなくて隔て板を破って避難されていました。
現場を訪れてみると開放廊下の壁は激しくひび割れて欠損し、中には鉄筋が露出して穴が開いている個所もあります。スチールの枠と扉は2.0~3.0cmほど歪んでしまい、殆どの扉は完全にロックされて開閉はできません。開放廊下側の壁には扉やパイプシャフト・窓などの開口部が多い為、マンションでは強度が弱くて最も損傷しやすい個所です。
バルコニー側の磁器タイル貼りの外壁は厚さ3.0cmのモルタル層と共にはがれ、地震特有のX印型に激しくひび割れと欠損が生じています。サッシの枠も露出して建付けも損傷が見られ、風や雨水が室内に侵入しそうな状態です。
1Fのエレベーターホールの柱型は床付近で座屈している様で、押し潰されて露出した鉄筋が地震のエネルギーの大きさを物語っていました。もちろん電気は遮断されてエレベーターも復旧のも見通しは立ちません。
この建物は8F 35戸 昭和56年4月の建築許可申請ですが、同年5月の建築基準法改正以前の旧耐震基準での駆け込み申請だったと思われます。仙台市内には他にも旧耐震基準のマンションは数多くありますが、このような被害は今のところ見受けられません。
よく開放廊下の壁の損傷状況をみると露出した鉄筋は細く、内側と外側に二重に配筋されておらずシングル配筋になっている様です。開放廊下の壁は耐力壁ではありませんが、今の耐震基準と比べると鉄筋の間隔が大きくて強度不足と思われます。設計と施工共に問題があるように思われますが、震災直後の仙台市の建物調査の結果によると、今すぐ倒壊する事はないが危険度判定C(3ランクの中で最も危険)と判定されていました。
設計と施工共に問題があるように思われますが、震災直後の仙台市の建物調査の結果によると、今すぐ倒壊する事はないが危険度判定C(3ランクの中で最も危険)と判定されていました。
お住まいの方々は60歳から70歳台の区分所有の方が多く、大変お気の毒ですが殆どが避難されて生活を維持されることは難しい様で、今後マンションをどうするのかが大きな課題となります。なお、半分程が賃貸の入居者の為、さっそく引っ越しを検討されている方も多いようです。
01 開放廊下
02 開放廊下
03 開放廊下 シングル配筋で鉄筋も細くしかも間隔は大きいようです。
04 エレベーターホールの柱型の座屈
05 バルコニーの外壁
06 バルコニー隔板
関連サイト 「マンション修繕工事サイト仙台」
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