最近のマンション大規模修繕工事には良く見られるバリアフリー化工事ですが、今回は既存のスロープの勾配を変更する為の工事です。また、インターロッキングと床面のわずかな段差(1.0cm)でつまずき転倒が発生しており、踊り場も巾木が張り出して狭く通行しにくい点なども解消する必要があります。
車いす用のエントランススロープの勾配は安全性を考慮して1/12勾配(20m進んで1m上がる)以下とされていますが、既存のスロープは1/8勾配でしかも直線で車道方向に設置されています。その為車椅子の介助者がいたとしても労力はきつく、また車道側へ落ちて行く事故の危険性もあります。
勾配を変える為には直線をLの字型のスロープに変更しましたが、車道が接近している為に限度がありようやく1/10勾配を確保。Lの字型へ変更して手摺を設置した事により安全性が確保され、降雪時や凍結を考慮して防滑塩ビシート貼り仕様となりました。
手摺は床面より75.0cmの高さで握りは木目調の塩ビ製とし、握りは34.0φの太さは女性や高齢者でも握りやすい太さとなっています。踊り場には点字ブロックを設け、塩ビ防滑シートの端末は剥がれ防止のへの字金物を取り付けます。手摺の固定は巾木をコア抜きし、強度の高いグラウト注入工法としました。
施工にあたっては斫り作業から型枠組み・コンクリート打設・養生を含めて約1か月を要し、その間には仮設のスロープを設置する必要があります。(床をモルタル金鏝仕上げ後に塩ビ防滑シートを貼る場合、10日間ほどの乾燥機期間が必要です)
なお、スロープについては以下の様な規定があります。
①スロープの有効幅員
・個人住宅の屋外は130cm以上が理想だが、敷地にあわせて車椅子の通行に支障のない幅でいい。
②踊場等
・スロープが直進で高低差が50cmを越える場合、50cmを越えるごとに踊場として、Uターン出来る長さ140~150cm程度の踊り場として水平部を設けるとよい。
③床仕上げ
・通路床面は滑りにくい材料を用い、平坦な仕上げとする。
・屋外など表面が濡れる恐れのあるスロープは通路床面にほうき目を入れる
④立ち上がり
・車椅子の脱輪などの防止のため20cmまでの立ち上がり、または側壁を。 5cm程の立ち上がりのうえに50cm迄のフェンスを付けてもよい。
⑤勾配
・屋内は8%(約1/12)以下、屋外では5%(約1/20)以下とする。
ただし、高低差が50cm以下の場合は緩和することが出来る。
ただ余裕があれば勾配は緩やかな程よい。
・車椅子は重心が高いので、スロープの勾配が急だと後に倒れる心配がある。
⑥手すり
・原則として両側に連続して取りつける。スロープの始点、終点を歩行者に知らせるため45cm以上の水平部を設ける
また、建築基準法施行令に傾斜路勾配について下記の制限があります。
(階段に代わる傾斜路)
第26条 階段に代わる傾斜路は、次の各号に定めるところによらなければならない。
1.勾配は、8分の1をこえないこと。
2.表面は、粗面とし、又はすべりにくい材料で仕上げること。
(以下、省略します。)
01 既存のスロープ
02 既存のスロープ
03 改修後のスロープ
04 改修後のスロープ
05 改修後のスロープ
06 押さえ金物と塩ビ防滑シート貼り
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