震災復旧工事で調査・マーキングを行う際、大規模修繕工事と異なって見られる特有の損傷があります。特に多いケースが雑壁のX字状貫通クラックや、壁の外部・内部に発生した顕著な欠損、又は大きな被害になると壁の段差や下端鉄筋の座屈等があります。
その中で被害の大小を問わず見受けられるのがサッシ廻り入隅部などの欠損で、廊下やバルコニーの2F~4Fにかけて特に多く見られる症状です。ちょっと見ると単なるひび割れにも見えますが、テストハンマーで叩くと浮きの症状が見られ、クラックではなく欠損としてカウントします。
補修方法としてはクラック等の注入やシール刷り込みとは異なり、浮いたモルタルを適正に除去する必要があり、これを怠ると再度強い地震などが発生した場合に亀裂が走り、壁面や天井面だどでは落下する可能性が残ります。通常、しっかりとした調査・マーキングや施工着手前の下地補修検査を行いますが、業者又はコンサルさんの対応がしっかりしていないと見過ごされるケースも稀にあります。
今回、他の業者さんの施工済み物件をたまたま拝見する機会がありましたが、補修したはずの雑壁入り隅部の欠損補修箇所に亀裂が入ったり、落下したりするケースがみられました。今回の工事は施主様から特命工事の依頼を頂いた為、社内検査で不具合のないことを確認し、施主様の下地補修検査確認を頂いての工事着手となっています。
施工の内容は予算によっても補修の工法は異なりますが、おそらく震度4程度の地震による損傷とすれば適正な施工が行われたとは言えません。同じ同業者としてこういう事態の指摘は慎みたい所ですが、施工した後にミスが判明するという事を避けるべきという観点から、あえて参考例として掲載させて頂きます。
基本的に欠損や爆裂は浮いたモルタルを丹念に斫り取り、クラックは幅に応じて適正に注入や刷り込みを仕様書の通り実行すべきで、下地補修検査などで不具合が指摘された場合には、コンサルさんや施主さんの指示に従います。なお、今回の下地補修工事には通常のポリマーセメント(無収縮モルタル)ではなく、接着性と強度確保の為コストの高いエポキシ樹脂モルタルを使用しました。
不適切な施工が明らかになった場合には業者に改善策を求める事になりますが、足場の必要のない共用廊下側ならまだ良いですが、足場や仮設の昇降階段の必要なバルコニー側や妻側だと容易ではありません。施主様に大きな負担になることは勿論、追加の仮設工事も発生し、時間がかかる事で入居者居者様への問題も発生します。
施工済み箇所の入隅部に発生したモルタル浮き
施工済み箇所の入隅部に発生したモルタル浮き
欠損箇所を斫らなかった可能性があります。
巾木の薄塗りモルタルが剥がれています。
天井面のクラックの未処置と思われます。
巾木のモルタル薄塗り箇所を斫り取ります。
サッシ廻り入隅部モルタルの斫り作業
浮いたモルタルはしっかり斫り取ります。
浮いたモルタルはしっかり斫り取ります。
共用廊下の下地補修工事の様子
角付けをして復旧を完了します。
バルコニー側のサッシ廻りも同様。
関連サイト「マンション修繕工事サイト仙台」
https://www.meiwa-renewal.jp/index.html
【仙台で外壁改修、塗装、防水、震災復旧工事を中心とした大規模修繕工事に特化した明和】


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