新築後10年以上経過し、防水層の劣化が進行してきた時点で、漏水がなくても将来的なコンクリートの保護を考慮した改修が必要になります。屋上防水層は漏水が有れば補修又は改修をせざるを得ませんが、漏水が生じていなくても予防保全の観点から漏水する前に補修又は改修をするケース例が良く有ります。
その際、第1のポイントは既存の防水層を撤去するかどうかです。撤去する場合には撤去費用の他に処分費がかかり、工事中の際には降雨の際漏水の可能性があります。その為、マンションの一般的な防水改修工事では撤去を行わない被せ方式が主流となっています。
撤去方式は、既存の防水層をすべて撤去し、新規に下地を作り直してから改めて防水を行う方式です。この方法では新築同様の下地条件を作れるため、防水工法の選択も比較的自由です。反面、コストアップ、撤去による騒音、廃棄物の発生、工事の長期化、撤去中の雨養生などの問題が発生します。
それに対し、被せ工法の場合、既存の防水層をなるべく撤去しないでその上に防水を行う方法です。この方法では、下地の傷み具合の診断能力や下地処理方法の選択に関する知識が要求されます。反面、騒音や撤去廃材の発生が少く、撤去直後の漏水の危険性も少なく安心です。しかも、コストダウンや工期の短縮も実現します。但し、施工回数には制限が有り、屋上の重量が増すため、工法にもよりますが3回目以降は撤去張替えが必要になります。
改修工事の重要なポイントとしては以下の2点が挙げられます。
1. 入居者様が生活されている場での工事である事。
新築工事と異なり、入居者様の生活の支障を来さない工事が求められます。工事の伴って発生する不快(騒音、臭気、振動など)をいかに抑えるかがポイントになります。良くあるるトラブルのケースとしては、床にドリル穿孔した時の騒音で屋上階の入居者からクレームが発生したり、平場と立上りの洗浄時の水が飛散し、バルコニーの洗濯物に飛散するケースなどが挙げられます。
2. 現状の劣化の進行や傷み具合に応じた工事である事。
屋上防水層の劣化の症状は地域の環境や立地条件、或いは日々の管理状況又は部分的な補修状況により総合的に判断されるべきもので、必ずしも長期修繕計画優先の画一的な修繕は好ましくありません。良くある例では、管理会社が修繕設計を行っている場合(コンサル業務)、築年数や劣化の状況にかかわらず、修繕積立金の限度額いっぱいの防水改修予算が設定されているケースが散見されます。適切な劣化診断調査に伴う工法・仕様を選択し、傷み具合に応じた下地処理などの考慮が重要です。
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